|
If
「君は私が死んだらどうする?」
ソファーの上。まるで寝そべるかのように端に足を投げ出しロイの肩に寄り掛かってだらだらと本を読んでいるときに、不意に後ろから落ちてきた言葉にエドワードは菓子を食べていた手を止め怪訝な顔をして首だけ捻って声の主のほうを振り返った。言った本人は他に視線をそらすこともなく黙々と新聞に目を通している。
「は?」
「だから、君は私が死んだらどうすると聞いたのだよ」
相変わらず新聞を読んだままにロイはエドワードに尋ねる。エドワードは何も答えずさらに眉をひそめながらロイの顔を見つめた。変なもん食ったんじゃねぇかなどといらない心配までしてしまう。
「意味わかんねぇ」
「そうか?ただのつまらない例え話だよ」
呆れた声を出すエドワードに対してロイは薄く笑う。そして新聞を閉じて何かを考えるように顎に手を当てる。
「そうだな。もしも万が一君が死んだら、私は毎日君の墓に花を送ろう」
ようやくエドワードのほうを向いてロイは話す。浮かべられるのは小憎たらしい微笑み。それに心底嫌そうな顔をしてエドワードは最悪だと悪態をつく。そしてまた元の姿勢に戻って本を読み始めた。ロイも再び新聞を開いてさっきまで見ていた記事の続きに目を通した。緩やかに流れる時間。穏やかな空間。
「泣いてやるよ」
ぽつりと呟いたエドワードの言葉が部屋に響いた。ロイは新聞を見つめた状態で目を見開く。そして緩慢な動作でエドワードのほうを向いた。ジャガイモをスライスして揚げて塩をふっただけの菓子を食べながら、エドワードは視線を本に向けている。金色の瞳は揺るがない。
「アンタが死んだら。笑って笑って笑って、そんで泣いてやるよ」
菓子を口にくわえながら振り向いてエドワードはにやりと笑う。ロイは苦笑してエドワードの頬に手を置いた。
「君は、まいったよ」
近寄る顔。ぱりっと菓子が弾ける音が鳴る。
「………んッ……」
含んだ菓子をそのままに、咬んで、触れて、舐めとって。痺れる余韻は舌に残って、塩と一緒に溶けていった。
|