ぐるぐるぐる



 あー、あー、あー、あーーー!ありえねぇッ!!
 久々に帰ってきたリゼンブール。ぶっちゃけ腕壊しちまったから帰ってきたリゼンブール。あいつの罵詈雑言+スパナは覚悟してた。覚悟してたさっ!でも村に着いても腕見せてもあいつは何の反応も示さない。むしろうわの空。窓辺に座って空なんかをじーーーーっと見つめて、ため息なんか吐いてやがる。
 ありえねぇ。
 それだけでもありえねぇってのに、そんなあいつの姿をアルが見て、「ウィンリィったら、何だか恋する乙女みたいだね」とか何とか云いやがった。
 ……………こ、恋ッ!?あいつが恋っ!?いつ、どこでっ、だれにッ!?
 つーかあいつが恋するようなタマかぁ!?あいつは乙女じゃねぇ、漢だ!…………そ、そりゃあ確かに?あいつにだって可愛いとこはある。客のために一生懸命になってるとことか、意地っ張りだけどすぐ泣くとことか、笑った顔だとか。うっかり見ちまった寝顔はマジに可愛かった。ちっちぇー頃からあいつを見てきたんだ、そんなの知ってる………って違ーーーーーう!!そうじゃなくてっ!オレはッ!あいつがッ!恋する乙女なんかじゃねぇッってことを云いたくてッ!
 ああ、でもやっぱり神様なんかいないんだ。
 ずっとうわの空だったあいつが急にオレの部屋に来た。「ねぇ、エド」って真剣にオレを見つめる。その目は随分と熱っぽい。………え、ウィンリィさん?何しにきたの?
ずずずずいっと迫ってくるあいつにオレは若干逃げ腰になる。そんで不意に、「ウィンリィったら、何だか〜」とアルの台詞を思い出した。
 こ、これは、まさかっ!!いやでもそんなまさかっ!!で、でも。これは期待してしまってもいいんだろうか!?
 あいつはやっぱり真剣な目でオレを見てくる。上目遣いでちらっとオレを見つめて。あのね、と話を切り出そうとする。
 落ち着け理性。落ち着け理性!だが、しかし!やっぱ、ほら。そーゆーことを女に先に言わせんのは男が廃る。
 あいつが何か言う前にオレは自分の気持ちを言おうとして、あいつに爆弾を落とされた。「あたし好きな人がいるのっお願いエド相談にのってッ!」
 ……………………。
 あぁアル、お前の言ってることは正しかったよ。確かにこいつは誰かに恋、なんてものをしてるようだ…………。
 脳みそが焼け野原になって使い物にならないオレの頭。そこに、まだまだあいつは爆弾を落としていく。黙って聞いてけば、どうやら相手はオレがこの世で一番、一生、永遠にっ、でぇっっっっ嫌いな、あの糞ミソ無能上司らしい。「あたしロイさんのことほんとに好きなの、ねぇエド、あたしどうしたらいいっ!?」なんて潤んだ目で見ないでくれ、オレのほうが泣きそうだッ!!
 一方的な押し問答が続いて、がくがくと肩まで揺さぶられはじめた無気力なオレに下の階から天の声が掛かった。「ねぇ兄さーーーーん。電話だよーーーー、大佐からーーーー!」
 はっはっは、なんてバッドなタイミング!





 太陽が僅かに覗く部屋は薄いカーテンがひかれており、外界との直接の接触を拒んでいるようにも見える。安宿のモノらしいそれは、けれどしっかりと己の役目を果たしている。眩しくはない。むしろ暗すぎるぐらいだと、エドワードは顔を顰めた。
「いきなり電話で呼び出しやがって。てめぇ、その情報嘘じゃねぇんだろうな」
「さあ、嘘か真かは君が確かめればいい」
 ベッドの上に座りながら優雅に足を組む上司をエドワードは睨みつける。ぎらぎらと輝くその双眸は暗い室内においても光を絶えることはない。上司はけれど、ねめつけてくるその視線をあっさりと無視して肩を竦めてみせた。
 それがエドワードの癇に障った。が、この上司がそんな嫌味な奴だとは厭でも分かっているので、何も云わない。黙って上着を脱いでいく。
「さっさと終わらせようぜ。リゼンブールにアルおいてきたんだ、とっとと帰りてぇ」 「君ねぇ、少しは色気のある誘い方をしてみてはどうだ」
「いたいけな少年相手に、情報の代わりに身体差し出せ何て云ったヤツにンなこと言われたかねぇよ」
 けっと吐き捨てて、エドワードはばさりとコートと黒い上着を脱ぎ捨てていく。次いでタンクトップに手をかけようとしたとき、急に手首を握られて制止が入った。あぁそういやぁこいつ脱がせんの好きだもんなー、とぼんやりと考えながら大人しく従う。
 手が止まったのを見計らって、上司は大人しくなったエドワードを抱え込んでどさりとベッドに投げ捨てた。
「………って…!」
 勢いよく投げ捨てられたためにエドワードは受身を取れなかった。背中と腰に衝撃が走る。だが苦痛に顔を歪めるエドワードを気にせずに上司は彼の上に乗り上げた。
「てんめぇ……何しやがんだっ!」
「いや、君があまりにも心外なことを言うからね」
 胸倉に掴みかかるエドワードに上司は笑顔を送った。それは極上の、見る者を凍りつかせる程の綺麗な笑み。
「私は。君が君だから抱くんだよ、鋼の。君を愛しているんだ」
 そう云って、エドワードのこめかみにキスを落とす。エドワードは鳥肌が立ちそうになった。気持ち悪い。それが率直な感想だった。
 こめかみに、額に、鼻に、頬に、首に、鎖骨に、ゆっくりと上司はキスを落としていく。そうしてるうちにもタンクトップの中へと手を進めていく。親指の腹で肌を撫ぜられて、びくんとエドワードの身体が反応した。
「私は、君という花に引き寄せられた蝶の1人だよ」
 視線を合わされて、囁かれる。目の当たりにする漆黒の双眸はあまりにも真っ黒で、出口のない闇の中に囚われそうになる。けれどそれに怯むようなエドワードではない。
「…はっ、蛾の間違いなんじゃねーの?」
「蛾、か。相変わらず君は手厳しいな。しかし………君が暗闇を照らす外灯ならばそれも悪くない」
「けっ、言ってろ」
 悪態を吐いて応酬する。だが上司には何の効き目もなく、むしろにんまりと笑われて口を塞がれてしまった。
 最初から舌が入ってくる。何度やってもざらりとした舌の感触には慣れはしない。息苦しくなってエドワードは抵抗するも、より激しく口内を蹂躙された。
 しばらくしてようやく唇を離されたとき、エドワードはかはりと咽かえった。ゲホゲホと思わず咽込んでしまう。
 しかし、そうしてるうちにも上司は下へ下へと唇を下ろしていく。蛞蝓の通った後のようにてらてらと、エドワードの身体には1つの筋が出来上がった。
 ちゅくりと肌を吸われる感触がして、エドワードは目を見開く。
「…て、めっ、痕つけ…なって言っ………ひあっ…!」
 いつの間にかボタンを外されていたズボンの間から上司の手が入り込んでくる。下肢を触られ急所を握られ、エドワードの身体は仰け反った。そのまま緩やかに激しく扱かれて、あっけなくエドワードは達してしまった。
 浅い呼吸を繰り返す。肩で息をする。上司がより下へと手を伸ばすのを気配で感じ取って、エドワードは吐き気をもよおした。
「好きだよ、鋼の」
 オレはてめぇなんざ大ッ嫌いだよっっ!!
 好きな奴の好きな奴に好きだよと云われて抱かれるオレ。

 嗚呼、世界は何て不条理なんだ!




(何だかお題/squeezed orange

ス イ マ セ ン で し た … !