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「なぁ、アンタってこーゆー趣味あんの?」
「は?」
「だからぁ、いたいけな少女に何杯も酒飲ませて家にオモチカエリする趣味」
ベッドにだらりと横たわりながら、エドワードは気分が悪そうに枕に埋めていた顔を少し上げてロイを見た。その琥珀の瞳は常よりとろんととろけていて妖艶な雰囲気を醸し出している。ロイはそのエドワードの姿を見とめて、はぁと息を吐いた。
「君ねぇ。私にそんな外道な趣味があるわけないだろう?」
「だって今まさにオレがそーゆー状況なんですけどー」
「…………それは君がかぱかぱ後先も考えずに呑んで動けなくなったから私が介抱してるだけだろう」
はぁ、とまたため息を吐いてロイはまだ羽織っていたタキシードの上着を脱いだ。固めていた髪型も崩す。エドワードはしばらくロイを見ていたが、しかし飽きたとばかりに寝返りを打ってじぃっと天井を見つめた。
「なぁ、大佐ぁー。アルはー?」
「あ、あぁ、確か明日1限に講義が入っているからと言って先に帰ったが」
「マジかよ。ちくしょーアルのやつ姉ちゃんを置き去りにしやがって…!」
昔は可愛かったのに生意気になっちまって、とエドワードは天井を見つめたままぐちぐちと弟に対する不満を呟いた。
そもそも何故自分が大佐に介抱されなければならないのか。エドワードはその点についても不満だった。
確かにロイとはこうしてエドワードが1人彼の家に行っても何一つ疑問に思われない関係にある。だが本音としては自分の家に帰りたかったという気持ちがエドワードにはあった。
ロイのことが嫌というわけではない。そういうわけではないのだが、だがこの家にいると無駄に落ち着かなくなるのだ。それがエドワードは嫌だった。
身体にまとわり付くドレスが欝陶しい。
「…………暑っ」
今すぐ脱ぎたかったが、けれど動くのも億劫だった。どうしようかな、とエドワードはぐるりと室内を見回して、そこではたとロイがいつのまにか寝室からいなくなっていたことに気が付いた。
きょろきょろと視線を彷徨わせて、本当にいないのか確認してみる。だが、まぁいっか、と片付けて、再びばふりと顔を枕に埋めた。
酒が身体中に回っている所為で火照って仕方がない。
暑いあっついとうわごとのように唱えていると、突然エドワードの頬にひんやりとしたものが当たった。
誘われるように見上げれば、これまたいつのまにか寝室に戻ってきていたロイと目が合った。
「水だ。飲めるか?」
尋ねられたことにこくんとエドワードは頷く。頷いたが、しかしコップに手を伸ばそうとして、止めて、ふるふると頭を振った。水は飲みたかったが、起き上がるのが面倒だった。
「そうか」
ロイはベッド脇の棚にコップを置いて、そうしてベッドの際に座ってさらりとエドワードの金髪を梳いた。不思議そうに見上げてくるエドワードの額を優しく撫でる。そしてコップの水を口に含んで、彼女の顎をくいっと持ち上げ口をふさいだ。
「んっ、んん………ふっ……」
口移しで程よく冷えた水がエドワードの喉を潤していく。けれど飲ませおわったあともロイの唇は離れず、エドワードの口内を堪能するかのように舌が蠢いた。
「…ん…ふっ……な、に、すんだよっ」
「何をするとは、具合の悪いときに水分を取るというのは大事なことなのだぞ、鋼の」
「水分とか、そういう問題じゃねーよ!アンタ、そーゆー趣味なかったんじゃねーのっ?」
「は?あぁ、確かに私は女性に酒を飲ませて家に連れ帰る趣味はないが、しかし君は違うだろう?」
ロイはエドワードが飲み干せずに唇から零れ落ちた水を指の腹で拭って、そしてにんまりと笑った。エドワードは絶句した。絶句したあと、ぎろりとロイを睨み付けた。
熱に浮かされて潤んだ瞳で睨んでも逆効果だというのに。ロイはエドワードを眺めて息を吐いた。
「なに、今日は何もしないさ。そんなに警戒しなくていい」
そして安心させるように彼女の髪を撫でた。
「うっそくさ」
「嘘じゃないさ。その代わり」
「その代わり?」
「明日は覚悟したまえ」
薄く笑って告げられた言の葉に、エドワードはうげっと顔をしかめた。こういうこともあるからこの家には来たくなかったんだ。はぁ、と息を吐きながらエドワードはぼふんと枕に突っ伏した。
目を瞑る。ロイはまだエドワードの頭を撫でていて、それがひどく気持ちが良かった。思わず、本当に思わず縋りつきたくなるほどに。
けれどそれはエドワードのプライドが許さない。
エドワードは自分の本心に反抗するようにありったけの嫌味を含ませて吐き出して、そうして意識を遠退かせていった。
「てめぇ、あとで覚えてろよっ…」
ロイは一瞬彼女の頭を撫でていた手を止めた。が、しかしすぅと眠りに堕ちていく少女の顔を見つめて、面白そうに笑った。
愛なんて知らないけれど、もしあるならきっとこんな・・・
(何だかお題/squeezed orange)
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