どうしてこいつはオレのことが好きなんだろう。エドワードは隣にいる男をちらりと見ながら、眉間に皺を寄せた。

 突然好きだと告白されて、勢い任せでうんと言ってしまって、何やらまぁいつのまにか旅から帰ってくるたびにこうして2人きりで出歩くようになって。けれどエドワードは今だに不思議に思っていた。何でこいつはオレのことが好きなんだ?巡った疑問はなかなか解けてはくれず、彼女の心に留まっていた。
 自分で云うのも何だが、染色体XXを持つ者としてエドワードは最悪の部類だろう。口も悪いし態度も悪い。口と同時に手が出るくらい喧嘩っぱやく、気に入らないヤツなら例え相手が年上でもくってかかる。自分が男だったら絶対こんな女いやだ、とエドワードは常々思っていた。だが、隣を歩く男は実際彼女に好きだと言ったのだ。何とも物好きなヤツ、とエドワードは呆れ返った。
 もしかして少女趣味なのだろうかと疑ったこともある。しかし、エドワードが耳にした男の過去の女たちはみな成熟した女性であり、彼女を相手にする方が特殊であるということをまざまざと知らされた。
 小柄でガリガリのやせっぽっちで凹凸もない。女としての魅力はエドワードには全く無いといっても過言ではない。それに、極めつけは機械鎧だ。右腕と左脚にある機械鎧。無論エドワードはこの身体になったことを嘆いてなどいない。誇りに思ったことは一度もないが、悔いたことも決してない。だが普通、大抵の男ならばこの機械鎧の身体を見れば好意の気持ちも萎えるだろう。しかし、今まさにエドワードの隣を歩いている男はまるでそんなこと気にもかけなかったようだ。
 もしかしてこいつ自分の幼なじみと同じように機械オタクなんだろうか、とエドワードは考える。だから自分が機械鎧であっても気にしないと。だが、男が機械オタクであるという噂も、もちろん彼の口から機械の話題も彼女は聞いたことが無かった。
 うーんとエドワードは頭を捻る。やはりこいつが自分を好きな理由がわからない。エドワードは眉間に皺を寄せながら隣の男をちらりと見た。と、男が不意に振り向いて目がばっちり合ってしまった。
「どうした?」
「い、いや、別に…………なぁ」
「何だ?」
「何であんたオレのこと好きなの?」
 直球勝負。エドワードは真っすぐに男を見つめる。男は一瞬瞠目したが、しかし揺るぎない金色の視線に思わずといった様子で苦笑を洩らした。
「そういう真直ぐなところだよ」
 言って、男はすぐに前を向いてしまった。エドワードは意味わかんねぇ、とより眉間に皺を寄せた。真剣に質問したのに上手くはぐらかされた気分だ。思わずむっとなる。だがその時に、ふんわりと手のひらに温かさを感じた。
 見てみれば、手を握られたのがわかった。男の方を向けば、にこりと微笑みかけられた。うっとエドワードは言葉に詰まる。その手はやさしくてあたたかくて大きくて、何故だか恥ずかしくなって彼女の顔はかぁっと朱に染まった。
 やっぱわけわかんねぇ。エドワードは眼尻を下げる。どうしてこいつがオレのこと好きかなんてわかんねぇ。
 けれど、手のひらの温かさは本物で、エドワードは恥ずかしさを紛らわすために、繋いだ手をぶんぶんと大げさに振ってみた。


そりゃもう熱烈な恋の色



(何だかお題/squeezed orange