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40センチという身長差は、考えているよりももっとずっとその差が激しいものである。
「…………ぷっ」
「わ、笑うなッ!」
ハボックの上着にしがみ付きながら、エドワードは顔を真っ赤にさせつつもきりっと彼を睨み付けた。笑われたことが実に心外だというように、むっとした表情を作る。だが本気で怒っているようには見えない。
彼女を本気で怒らせれば、睨まれるどころか目さえ合わせてくれなくなる。そうではないということは、つまりエドワードは本心では腹を立てていないということになる。むしろ今回の場合は、照れの比重が大きいようだ。
ハボックは、それまで伸ばされていて今はもう地面に着いてしまった彼女の足元を見て口元を緩めた。
「笑ってねぇよ」
「………笑った。ぜってー笑った!」
「笑ってねぇって」
「思いっきり笑ったじゃねーかっ!なにより緩んでるその口元が証拠だろっ!?」
エドワードはじぃとじと目でハボックを見やる。その笑ったと認めるまで意地でも引きそうにない様子に、ハボックはははっと乾いた笑いを浮かべた。
そんな彼の態度を肯定と認めたのか、エドワードはふんっとそっぽを向いてしまった。
「人がち、ち、ち…………小さい…………からって!馬鹿にしやがって」
ぼそぼそと呟く。そしてちらっとハボックを見てから、また思いっきり顔を逸らしてしまった。ふんっと膨れっ面を作っている。ハボックはそんな彼女の様子にはぁーとため息を吐いた。
ハボックとしては、エドワードを小さいからといって馬鹿にした覚えはこれっぽっちもない。先程からの口論の種である笑った笑ってないという問題は多少なりとも心当たりがあるが、しかしそれは彼女を馬鹿にしたからというものでは断じてなかった。
身長差が激しいと色々と不便なことがある。その1つがキスであろう。
背が高いほうは必然的に屈まなければならないし、背が低いほうは背伸びをしなければ相手に届かない。
先程のハボックとエドワードもそうだった。ハボックの上着を掴んで、精一杯背伸びを試みたエドワード。つまさき立ちでふるふると足を震えさせながらも、一生懸命ハボックに届こうとしたその姿。それがあまりに可愛らしくて愛しくて、ハボックは思わず吹き出してしまったのだ。
だが彼女はそのハボックの行為を完璧に小さいから馬鹿にされたと誤解したのだろう。
「たぁいしょー、機嫌直せって」
な?と目を合わせて笑ってみせる。エドワードはむーと口を尖らせたが、次の瞬間ハボックの胸ぐらを掴んで彼を引き寄せた。
「なんで笑ったんだよ」
「なんでってそりゃあ……」
さてなんと説明すべきか、とハボックは少し戸惑った。一から説明を始めても、それはそれで彼女が真っ赤になって怒りだすのも目に見えてるだろう。うーん、と苦笑を浮かべながら考える。
その様子をどう受けとめたのか、エドワードは彼を睨み付けながらさらにぐいっと引き寄せた。
「ちっくしょーぜってぇあと何年かしたら少尉ぐらいでっかくなってやる」
「いや、お前それはちょっと、勘弁してください」
せっかく今のまんまが一番可愛いんだからよーと苦笑混じりに告げられる。
それに一瞬はっ?と呆気にとられたが、気を取り直して、エドワードは地面から踵をすっと離した。
ものすごくシャクだ。
(とにかくお題/squeezed orange)
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