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実に素晴らしい目覚まし時計
「お母さん、起きて!」
燦々と太陽の光が窓から部屋の中に入ってくる。その光で部屋は既にぽかぽかと暖まっていた。
7〜8才くらいと思われる少女が、いまだベッドの住人となっている母親の肩をゆらゆらと揺らす。色素の薄い金髪は光できらきらと輝きを増し、コバルトブルーの瞳は若干の怒気を孕んでいる。
だが母親はうっすらと目蓋を開けてあと5分と云ったあと、再びすいよすいよと眠りにつこうとした。
この人は本当に起こすのが大変な人物なのだ。一度眠ったら並大抵のことじゃ起きやしない。くかーと寝息を立てそうな母親を、しかし少女は何度も揺さぶった。一度ぐらい起こすのに失敗したからといって、はいそうですかと諦める精神は持っていないのだ。そうでなかったらこの母親はいつまでも眠りこけていることになってしまう。
「ダーメ!5分とか何とか云っていつまで寝る気なの!?ほらお母さん、起きてったら!アル君なんてとっくの間に起きちゃってるんだからね?」
同居している叔父の名を引き合いに出しながら母親を起こす。お母さん起きて!と云いながら両手で何度も何度も肩を揺さぶっていると、んーっと母親が身動ぎした。
「………わーった、わーったって!起きる。起きます!だからンな耳元で騒ぐなって」
いまだ眠そうな気配を残したままだがしっかりと目を開いて母親は少女を見つめる。起きるといっても母親はまだベッドに横たわってる状態のままだから、必然と少女は母親を見下ろす形になってしまう。母親の金色の瞳の中に自分が映っていることを見とめて、少女はにんまりと笑った。
「起きた?」
「おう」
「ホント?」
「ほんとほんと」
「じゃあ、あたしゴハン作ってくるね!」
母親が本当に起きたのか確認してから、少女は部屋から跳びだしていった。ばたばたと足音がキッチンのほうへ向かっていくのが聞こえる。部屋に残された母親はしばしぼんやりと天井を見つめてから、やれやれと身体を起こした。ふー、とため息をつきながら少女が出て行った部屋のドアを見つめる。
「我が娘ながら面倒見がいいというか何と云うか……」
もし自分が少女の立場だったら、こんな母親放っておくか逆に蹴り飛ばしてやりたくなるだろう。それなのに、非行に走るどころか甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる少女の姿に感嘆すらもれてくる。
「父親に似ちゃってまぁ……」
思えば、少女の父親も少女のように類まれに見る世話好きだったように思い出される。その性格を、少女は色濃く受け継いだのだろう。
「ま、若干せーかく悪いトコはオレに似たんだろうケド」
くはりと母親は苦笑を洩らす。そしてふぁぁと欠伸をしながら、ゆっくりとベッドから降り立った。
(何だかお題/squeezed orange)
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