マフィアランドに行きました。(獄寺君と一緒編)



「すいませんッ!すいません10代目ッ!!」
「うん、わかった。わかったからさ。お願いだからそこで土下座するの止めてくんない?」
 大勢の赤の他人様に遠巻きに見られている中で、ベンチに横たわっているツナは、そのベンチの下でもはや土下座とは言えないまでに頭を下げまくっている獄寺を虚ろげに見た。
 獄寺は「しかし」と食い下がるがツナに土下座止めなかったら縁切るからと言われてしまい、仕方なしに顔を上げた。
 ツナは青白くなっている顔で獄寺に力なく笑って何処か遠くを見つめ始めた。


 ツナがベンチに横たわることになったのはこのような状態になる前に乗ったコーヒーカップにあった。どちらが言ったのかは定かではないがそれに乗ろうということになり、ツナと獄寺は2・3分並んでいた。いざ自分達の順番になり機械が動き始めると、隣のカップでぐんぐんとスピードを調節していく何処かの子供たちに触発されて獄寺がカップの真ん中をぐるぐる回し始めたのだ。運転が終わるまでその調節部分をぐるぐるぐるぐる回し続けたのでそのスピードは半端なものではない。乗り終えたツナは完全に三半器官をやられてしまい、歩くこともままならずベンチの住人となってしまったのだった。
「うん。まぁコーヒーカップに乗った時点で何となく回すだろうなぁとは思ってたからさ」
「そんな!期待に応えることができて光栄です」
「いや、誉めてないし」
 一気に瞳を輝かせ始めた獄寺をツナは一蹴する。そして手のひらを口元に持ってきて何とか吐き気を抑える。
 獄寺はそんなツナを気遣わしげに見守った。
「10代目……………あ、オレ、ちょっと失礼します!」
「えッ、なっ、獄寺君?」
 それまでツナを心配そうに見つめていた獄寺は突然何かに気付いたように急に頭を下げて何処かへと行ってしまった。追いていかれたツナは起き上がろうとしたが途端吐き気をもよおしベンチに戻るほかなかった。
 頭がぐらんぐらんと揺れる。けれどそれも他人の好奇の視線が刺さるのも気にしないでツナは獄寺に何があったんだろうと考える。
 彼の突飛な行動は今更だし必ず戻ってくるだろうからあまり深くは考えないが、このように具合が悪い状況なので彼がいなくなってしまうだけで何とも心許ない。
 不安を打ち消すのようにぎゅっと目を瞑ってツナは身体を縮こませた。
 視界が真っ暗になった途端頭の感覚が鮮明になる。
 込み上げてくる胃液を唾で飲み下して何分かわからない時間を過ごしていると不意に額に冷たいものがあたった。
 ゆっくりとツナが目蓋を上げてみると、そこには飲み物が入った紙コップを持った獄寺がいた。
「すいません、遅くなってしまって」
 若干息を弾ませながら獄寺は紙コップをツナに差しだす。
「リンゴジュースなんで比較的飲みやすいかと思うんスけど」
「これ、買ってきてくれたんだ」
 ぱちくりと瞳を瞬いて驚きながら。差しだされた紙コップを受け取ろうとツナは起き上がろうとする。胃から何かがせり上がってくるような感覚に陥ったが無視して身体を起こしベンチの背もたれに寄り掛かった。
 そしてコップを受け取り、獄寺がその隣に座った。
「ありがと」
 一口リンゴジュースを飲んでツナは獄寺に礼を言う。
 最初受け取った時は飲めるかどうかわからなかったが、意外に身体は水分を渇望していたらしい、すっと気持ちが楽になっていくように感じた。
「いえ、お礼なんて。……………本当にすいませんでした」
 全身から申し訳なさを漂わせて獄寺はしょげた犬のように落ち込んでいる。ツナはまた一口リンゴジュースを口に含んで、そしてため息をついた。
「いいよ。最初よりはだいぶ具合悪いの治まってきたしこれも買ってきてくれたし」
 言って紙コップを持ち上げる。
「っていうかよく獄寺君は気持ち悪くならなかったよね」
「あんなの、姉貴に比べれば全然余裕っスよ」
「………………ホント獄寺君の弱点ってビアンキなんだね」
 呆然と獄寺を見つめたあとツナはくすりと笑いだす。獄寺は顔を上げて不思議そうにツナを見つめた。
 こくりとまた一口リンゴジュースを飲み込んでツナは獄寺に笑いかける。具合が悪いのはなかなか治らないけどそれでも自分のために何かしてくれたというのが嬉しかったから。
 ツナはコップを持っていない手で獄寺の手をぎゅっと握る。
「じゅ、10代目!?」
「これ飲み終わったらさ。今度はお土産売ってるとこを見てみない?」
「は、はい!」
 照れ笑い照れ笑い。遊びにきたわけなんだけど。目の前には乗り物がたくさんあるわけなんだけど。たまにはベンチで一休みってのも悪くはないよね。