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どーしてこの人は記念日でもない特別な日でもないまったくもって何も変哲のない日にこーゆーことが出来ちゃうんだろう、とツナは花束を持った獄寺をじと目で見やった。
花束を貰うなんて、日本人の感覚からは結構縁のないことだ。それこそ漫画やドラマの世界のことという感じがする。ツナは目の前に差し出された花束を見つめて眩暈がしそうになった。
ツナが獄寺から花束を貰うのは、これが初めてではない。獄寺と付き合うようになってからそれこそ彼が彼女の家に来るたびに彼女は彼から花束を貰っていた。今では家中花に溢れて、毎日奈々が楽しそうに花瓶に水を注いでいる。
好きな相手に花を貰えるのだ、嬉しくないわけがない。嬉しくないわけがないのだが、しかしツナは花束を貰うということに起因するちょっとした羞恥心と、申し訳ないなという気持ちがそれに混在していた。
獄寺から何もかも貰ってばかりで、自分はちっとも彼にお返しをしていない、とツナは歯痒く思っていた。何かしようと思ってはいるのだけれど、それでもタイミングを逃したりと失敗ばかりだ。そもそも何かしよう何かしようとは考えているものの、その「何」をしたら良いのかも、ツナにはわからなかった。獄寺がどうやったら喜んでくれるのか、どうしたら自分が今まで貰ってきた幸福のお返しになるのか。それを考えもつけなかった。そして行動も出来ない自分が、ツナは腹立たしかった。
「じゅ、10代目?」
じぃーっと見つめてくるツナに、獄寺は訝しげな声を上げる。その声にツナははっと我に返った。
「あの、えと、お気に召しませんでした、か?」
この花、と彼はあからさまにしゅんと悄気たような声色を出した。
あぁ違うんだ。ツナは獄寺の落胆ぶりにあわあわと慌てた。獄寺君に変な気を使わせちゃったねごめんねごめんね。ツナは花束を受け取ろうと手を伸ばす。
「違うんだ。えーと、気に入らないとかそーゆーことじゃなくてねっ?えーと、」
えーとから先が続かない。何て言ったらいいんだ。自己嫌悪に陥ってましたなんて言えるわけがない。ツナは必死に思考を巡らす。ありのまま考えてたことを言ってもいいのだけれど、それは恥ずかしいから全力で違う言い訳を考えたい。自然と眉間に皺が寄る。けれど不安げに揺れる瞳とぶつかって、ツナはうぐと思考を停止させた。
「と、とにかく」
奇妙なまでに大きな声を出してしまった。
「オレ、獄寺君から貰うもので気に入らないものとか絶対ないからっ!」
一気にまくしたてて花束を受け取る。途端ツナの腕の中にすっとした香りが立ちこめた。
「これ、ありがとう」
うまく笑えたかどうかはわからないが、とりあえずお礼は言ってみる。獄寺はぱちくりと目を瞬かせて、はっ?だのえっ?だの狼狽えている。顔は僅かどころか大変赤い。だがツナはそれに気付かなかった。顔ごと花束に視線をやって、ちょいちょいと指先で花びらをいじっている。
甘く爽やかな香りが彼女の胸の中に浸透していく。それを感じながら、今度こそは獄寺君にお返しをしよう、と、ツナはそう決意していた。
敵わない存在
(とにかくお題/squeezed orange)
獄ツナは双方とも無自覚で相手を攻めてればいい。
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