キスをするときはいつもそうだ。

 雲雀はすぐ近くに立っているツナを見つめながら軽く息を吐いた。
 目の前にいる彼女は、近づいてくる雲雀に対して構えるようにその大きな瞳をぎゅっと閉じて、透き通る榛色を隠している。そして目蓋は強く瞑りすぎた所為で、先程からふるふるふるふると震えている。僅かに顔には朱が射し込んでおり、それは彼女の精一杯な様子が手に取るようにわかるようだった。顔を近付けるたびに彼女のその様子は顕著に表に現われる。
「綱吉」
 雲雀は呼び掛けながら、ツナの頬に手を当ててみる。途端、びくりと彼女の身体が跳ねた。顔に更に赤みが増している。
「綱吉」
 ゆっくりと彼女に顔を近付けていく。親指の腹で頬をさらりと拭ってみる。すると彼女はますます目を強く閉じ、そして耳まで紅く染まっていった。
 雲雀はそのツナの様子にくつりと笑いそうになった。
 こうしてキスをするのは初めてではない。そのくせに、彼女の反応はいつまで経っても初々しいものであった。
 緊張で小動物のようにふるふると震えている彼女のその様は、雲雀の彼女に対する庇護欲と、そしてそれに矛盾する嗜虐心を炙り出す。
「つなよし」
 呼んで、焦点が定まらない位置まで顔を近付ける。彼女はより真っ赤になっていて、そしてより固く目を閉ざしているだろう。そのことが、雲雀には気配でわかった。
 嗚呼なんて滑稽な姿であろうか。けれどなんて愛しい姿であろうか。
 吐息が触れるまで近づくと、ツナが身体を固くさせた。雲雀は、ふ、と笑みを零す。そして、かぷり。引き結ばれた唇にではなく、無防備な鼻に、彼は噛み付いた。
「ひ、ヒバリさんッ…!?」
 噛み付かれたツナは鼻を手で押さえて、固く閉じた瞳を見開き、目をぱちくりとさせた。その榛は驚愕を彩っている。あわあわと慌てふためき、何事かとクエッションマーク多数な視線を雲雀に送っていた。その様子は先程のそれとは大違いだ。そんな様子の彼女に、ぷっと雲雀は吹き出す。
「ちょっ、な、なに。なに笑ってるんですかっ!」
 くくっと肩を揺らす雲雀にツナは抗議の声を上げた。わけもわからない羞恥でまたしても顔が赤くなっていく。大きな榛は雲雀だけを映し出している。彼女が目を閉じる様子はなさそうだ。
 そのことを確認して、雲雀はにんまりと笑う。そして彼女の手を引いて身体ごと引き寄せて、今度こそ唇に、唇を重ねた。



黒猫のワルツ



(とにかくお題/squeezed orange


キスするとき、受けっ子がふるふる目蓋を震わせていたら実にかんわゆいよなーと思います(でも私が書いたら玉砕した…!NON!)