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※ツナ+ツナより年齢が低いキャラ=先生、ツナ以上の年齢のキャラ=保育園児という保育園パロで御座います。
見よ、このまっすぐに歪んだ世界!
清々しい朝はやはり爽やかな挨拶が一番だ。
「おはよーございます!」
「はい、おはようございます」
元気のいい園児の挨拶に、彼らを迎え入れるために玄関先で待機していたツナはにっこりと笑って応えた。
ここは並盛町の沢田保育園。ツナの母である奈々が園長をしているこの保育園で彼女は今年の4月より働いている。もとより子供があまり好きではなく、じゃあなんでこの仕事を選んだの?と問われれば、家が保育園だからなんとなく保育士にならなきゃだめなのかなーと思って、と答える彼女だが、しかし存外この仕事を楽しんでいたりする。
たまにわずらわしいなーと思うときもあるが、それも仕事であるし、何より子供を放っておけない性質なものだから最終的には“良い先生”になってしまう。要するにツナは保育士に向いていたのである。
1人でもそもそと外靴から上履きに履き替えている園児を見守りながら、送り届けた母親と二言三言連絡事項などの会話する。
今日は4時に迎えに来ます、そんな言葉が母親から出た頃には、子供はすでに上履きを履き終えていて、早く中に入って友達と遊びたいという気持ちと母親と離れたくないという気持ちの矛盾でソワソワしている。いってらっしゃ、いいってきます。子供は母親に抱きついてちゅっと母親の頬に唇を寄せてから玄関のガラス戸を開けてバタバタと園の中に入っていった。
ツナはその様子を目を細めて見ていた。と同時に、最近の親子は凄いなーオレらの時代はあんなことする親子いなかったよ、と妙に感嘆めいた感想を胸に抱いていた。別れ際にちゅ、なんていう親子は、この親子だけじゃないのだ。
彼女自身は母親にほっぺにちゅ、なんて記憶には無い。いや、ツナの場合は家が保育園で母親と離れる機会がなかったのだから、という理由もあるが、しかし幼い頃見ていた園児の出迎えを思い出してもそのような記憶は無かった。
やっぱりジェネレーションギャップっていうものなのかな、と些か見当違いのことを考えながら、ツナは園児が無事部屋に辿り着けたかどうか玄関先より覗いてみる。どうやら大丈夫らしい。よしよし。
うん、と頷いてから玄関先で待機を続けようと門の方を振り向こうとしたところで声を掛けられた。「ツナ」
振り向いた先にいたのは黒髪を短く切りそろえたいかにもスポーツ少年という出で立ちをした子供だった。
「あ、おはよう。山本」
にこりと笑顔を示すとにっかりとした笑みを返してくれた。それに些か心が温かくなりながら、彼の後ろに視線を移す。「おはようございます」と彼の父親にも挨拶する。
「おはよー、ツナちゃん。今日もうちの息子を頼むわ」
「はい、もちろんですよ」
「たぶん……店開ける前だから…いつも通り5時頃には迎えに来れると思うからよ」
「わかりました。では、いってらっしゃい」
山本の父はぐりぐりと自分の息子の頭を撫でる。そしてなにすんだよと笑う息子に笑顔を見せながら、帰ってちゃっちゃと仕込みしなきゃいけねーから、と早々に園を去ってしまった。
山本の家は父子家庭な上に家業が寿司屋ということで朝も夜も中々に時間の都合がつかない。それでもこうして毎日保育園に父親自ら送迎に来てるというのにはツナは素直に感動していた。父親の姿が園の玄関から見えなくなってから、山本がくるりとツナの方を向く。
「なぁ、ツナ」
「ん?何?」
「今日俺らの組、外で遊べるんだよな?」
「あ、うん。お昼ご飯食べる前に遊べるよ。9時半、くらいからかな。11時まで外で遊んで、そのあとシャワー浴びてご飯」
「そっか。じゃあさ、そんとき、キャッチボールやってもいいんだよな?」
期待に満ちた目で見つめられる。もちろんその答えはオッケーだ。「うん、いいよ」と答えた時の喜びようはツナの目を和ませてくれるものだった。喜びながらはっと気が付いて「ツナも一緒にやんね?」と山本は言おうとした。
が、しかし「ツナも」と言った瞬間にその言葉の続きは聞こえなくなってしまった。正確に言うと、かき消された。
「その方をそのような呼び方で呼ぶな!」
声のした方、ツナと山本が一斉に振り向いたその先には、ギャーと怒りながらこちらに大股で向かってきている銀髪の子供が1人。「あ、獄寺君おはよー」とツナは声を掛ける。だがその声があっさりとスルーされ、獄寺と呼ばれた子供は山本に突っかかっていった。
「大っ体、てめぇはこの方に馴れ馴れしすぎんだよ」
「そっか?」
「おはよー……って聞いてるのかな、獄寺君」
「そうだろ!?先生の名前を呼び捨てるなんてもってのほかだっ」
「おーい、おはよーってば、ってか朝からケンカはよくないぞ」
「でもツナはなんも言わねーぜ?」
「それはこの方が優しいからだっ」
「おーい、って」
「いいか、てめぇ!」
「ん?」
「今度からはこの方を10代目って呼べ!」
「……………うん、獄寺君。それもちょっと違うよね」
この沢田保育園は意外と歴史がある施設で、現在の園長である奈々は9代目の園長であった。だからツナが世俗性で園長を継げば自然と10代目園長になるのだが、しかし今のところその予定はないし、それにそもそもなんでそんなことを君が知ってるの?とツナは獄寺に疑問の目を向けずに入られなかった。
獄寺と山本はまだケンカを続行している。というよりも獄寺が山本に突っかかっていて山本は笑ってそれを何とも気にしていない様子だった。
だからツナも敢えて止めには入らなかった。これが彼らなりのコミュニケーションだと思っているからだ。
それに彼らは2人ともツナが担当の組の園児なのだが、その組の中で2人で1つの組を作るさい、この2人がペアを組んでいることは結構あり、仲が悪いわけじゃないということを知っている。だから大丈夫だろ、とツナは判断して、獄寺の後ろを歩いてきた彼の姉が玄関に到着するのを見計らって声を掛けた。
「おはよう、ビアンキ」
獄寺の姉であるビアンキは弟より1歳上で、この園の年長組に所属している。
淡い茶髪を緩くウェーブさせ目元がパチッとしたその姿はまるでお人形さんのようであった。見る分ならこれ以上に胸にきゅんとくる園児はいないだろう。そう、見る分なら。
ビアンキはツナに挨拶を返したあと、くるくると辺りを見回した。誰かを探しているようだった。
「おはよう、ツナ。………リボーンは?」
「えと、リボーン先生は確か」
園長先生と何か話してるみたいだよ、と答えようとして、けれどその必要は無かった。
いつの間にやら玄関先に出てきていた話の渦中にいた人物がツナの後ろに立って顔をにゅっと出してきたからだ。
「ちゃおっス。ビアンキ」
「リボーン…!」
捜し求めていた人物が目の前に現れて、ビアンキは感極まる。彼女の周りで花がブワワワッと咲き誇りそうな勢いだ。
リボーンの前に立っているツナをドンと押しのけ、彼女は彼に飛びついた。彼女の組の担当である彼と会うのは1日ぶり、詳しくいえば15時間ぶりというのに髄分と熱狂的なものである。
押し退けられたツナは突き飛ばされた衝撃でうっかり地面に手を突いてしまい「アイタっ」と軽く声を上げた。実際はかすり傷すらついてないだが、しかし何となく反応でだ。
ぱんぱんと地面についた手のひらから汚れを払いつつ、突き飛ばした方を見る。するとそこはまるで辺りにバラが咲き誇ってるかのような錯覚が見えて、ツナは引きつった笑みを浮かべた。ありえない。
「なんだ?」とビアンキを適当にあしらいながら面白そうにこちらを見ているリボーンと目が合う。
前にビアンキから聞いたことがあるのだが、彼女は彼の4番目の愛人らしい。ビアンキが一方的に彼に熱を上げているのは分かっているが、それならそれで、幼児相手に何てことを言っているのか、とリボーンに言ってやりたかった。が、しかしこの保育園では奈々の次に実質上の権力を持っている彼に突っ込みを入れるなんて芸当、ツナには到底無理だった。
「ナンデモナイデス」と目線を逸らす。今日は砂埃が多いなーなんて意識を遠方へとやってみる。そしてふと目線を逸らした先にあった光景を見て、ツナはリボーンと目を逸らさなきゃよかったと心の底からがっつり思った。
そこで見た光景は、目の錯覚であって欲しかった。
そこだけ土煙が巻き起こっているから、蜃気楼とでもして欲しかった。
あそこにいるのは、年長組の中の2人だろうか。
「朝から君と会うとは、まったく気分が悪いですよ」
「へぇ、珍しく意見があったね。僕もだよ」
確実に、そうだ。年長組の中でも一番の問題児たちであるあいつらだ。
土煙の中から見えるパイナップルのような特徴的な髪型の子供と猫っ毛な黒髪をを持つ子供にツナは涙が出るかと思った。
何故彼らの周りで土煙が上がっているかというと、それは彼らが玄関先の園庭で、ケンカと言うのもおこがましい、むしろ“戦い”でいいんじゃないかなと思うほど派手な衝突を繰り広げているからである。
彼らがこうして衝突するたびに園庭の被害は馬鹿にならない。しかもこの2人は出会うたびにこうして衝突するのであり、また職員もこの衝突に巻き込まれないために事態が収束するまで手を出さないのだ。このように園庭の被害を憂い、彼らのストッパーに入るのはツナしかいない。
ツナはぐるりと周りを見渡す。真後ろでは自分の担当の組の男の子たちが喧嘩をしている。右では同僚と園児がなにやらバラを咲かせている。左前方では問題児たちが壮絶なバトルを繰り広げている。
保育士の仕事は楽しい。楽しいし向いてるとは思うが、しかしこんな状況下の時は心底この仕事を辞めたくなる。
ツナははぁーと息を吐く。だがこの仕事を辞めないのは、結局この仕事が好きだからなのだろう。
胸の中の空気を一新してからツナはひとまず問題児たちの喧嘩を収束させるために左前方へと駆けていった。
「こらーっ、何やってんの2人ともっ!」
沢田保育園は、本日も元気に運営中。
(何だかお題/squeezed orange)
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