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「僕は美しいものが好きなんです」
その言葉に、はぁ?とツナは相槌1つ。意味がまったくわからないと目の玉を丸くさせた。
麗らかな休日。勉強嫌いにとっては厭わしすぎる学校の授業が無い最高の日。今日は一日中、ゲームしたり昼寝したり、のんびり過ごそうとツナは決めていた。しかも今日は珍しく、ランボやイーピンが外に遊びに行っており、リボーンとビアンキさえもどこかに出かけている。家の中にいるのはツナの母である奈々とツナだけだ。
家の中でこんなにも1人でのんびりするチャンスは滅多にない。もしかしたら、これが最初で最後かもしれないという勢いだ。だからツナは朝遅くに起きたときから、今日は平和に過ごせるとルンルン気分でいたのだ。
そう、昼過ぎに玄関のチャイムが鳴るまでは。
お願いだから母さん、誰も彼もオレの知り合いだからってそうほいほい家にあげるのやめよーよ。ツナは母親の楽天的といっていいのかどうか最早わからない性格を思いっきり嘆いた。そして1回ため息を吐いてから、目線を上げて真正面を見据えた。
ポテチを食べながらさて昼寝でもしようかなと考えていたツナは、突然小難しい顔をして自分の部屋に入ってきた骸に心の底からびびった。何の用か、などという疑問を考える余裕もなく、ただひたすら、何で!?と単純なものが頭を駆け巡り、そしてこちんと固まった。だが骸はツナのことなど気にせず、彼女の向かいにどっかりと座った。小難しい表情を崩さずそのまま最初に口に出した言葉は、しかし「僕は美しいものが好きなんです」という宣言だった。
骸とツナは小さなテーブルを挟んで向かい合わせに座っている。この2人が正座をしながら膝を向き合わせているという光景は何だか滑稽に思える。
骸は今も難しい顔をして何やらを語っている。自然物と人工物の美しさの比較はどうとやら。フォルムの曲線美がどうとやら。ツナはうっかりうとうとと瞬きを繰り返し、眠ってしまいそうになった。ふわぁ、と欠伸をかいてしまう。
「それがボンゴレ!」
だが、いきなりダンッとテーブルに手をついた骸に、ツナはぱちくりと目を瞬かせた。もしかして話を聞いてなかったから怒ったのだろうか。一気に冴えてきた頭でそう考えて、ちらりと彼の様子を窺う。相変わらず真剣な面持ちで居続ける骸は、しかしどうやら怒っているようではなかった。
「えと、何……?」
「はぁ、どうしてでしょう」
「いやだから、何?」
「ボンゴレ、貴女は何の取り柄もない非道く矮小な存在だ」
伏せ目がちに告げられた言葉に、ツナははっ?と顔を歪めた。だが骸の言葉はまだ続く。
「何においても平均的かそれ以下。顔だって特別に美人というわけではない。身体だって…ああちゃんと食べてるんですか?偏った食生活は美容の敵ですよ。まず間食をやめたほうがいいでしょう。まったく、こんな添加物が大量に含まれたものを食べるなんて貴女の気が知れませんよ」
怒濤に紡がれる言葉にツナは、その内容を頭に入れる以前にその勢いに圧倒された。だが時間が経てば経つほどに情報は綺麗に整理されていって、彼女の顔色は変わっていった。
「な、何が云いたいんだよ、おまえ…!」
「そうですね。つまり、貴女は決して美しい人ではないということです」
帰れ!淡々と言い渡されたことに、ツナが率直に思ったことだ。例えそれが事実であっても、他人の口から聞くのはひどくきつい。それなのに何でこいつは平気でこーゆーことを言うのかなぁ!ツナは思いっきり骸を睨み付けた。だが、彼はまったく怯まなかった。テーブルの上で手を組み真剣な面持ちで、
「貴女は美しくはない。僕は美しいものが好き。それなのにどうして僕は貴女のことを可愛いと思うのでしょうか?」
真剣に質問されたことに、ツナは心底どーでもいいと最早考えることさえも投げ出した。
サラダデイズ
(とにかくお題/squeezed orange)
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