オレがリボーンを好き?そんなバカな!

 良ーく考え直してみろよ、オレ。だって、だってあのリボーンだぞ!?冷酷無慈悲唯我独尊のあの家庭教師さまだぞ!?出会ってから10年強。思えば、良くこれまでオレは逃げ出さなかった。あいつが来てからオレの生活は一変して、一気にトラブルだらけのものへと変貌を遂げた。いっつも無理難題を押しつけてきやがってさ。おかげで心労が溜まるばっかだよ。あいつの策略にまんまとのせられて、こーしてボンゴレ10代目も就任しちゃったし。あー、もー、ほんっとありえない。……………でも。でも、でも。リボーンが突き付ける無理難題ってゆーのは、実はほとんどは、オレのため、だったりするんだ。そりゃ、あいつの暇つぶしのために引っ張り回されることもあるけど。あ、思い出したらなんか腹立ってきた。リボーンのやつ完全にオレをおちょくりやがって…!今度は絶対脅しにのってたまるかッ。って、け、けど。無理難題の多くは、オレのためってのは本当なんだ。昔は気付かなかったけど、リボーンはいつだってオレの力になってくれた。陰ながら支えてくれた。今だって、本当はオレが10代目に就任した時に9代目との契約が切れたはずなのに、オレがダメダメだからって、まだまだ半人前だからって、傍にいてくれる。それに、オレが今こーして仲間に囲まれて過ごせているのは、あいつのおかげなんだ。あいつのおかげで、オレは昔じゃ考えれないくらい、騒がしく幸せに生きている。
 って!な、なにオレはリボーンの擁護なんかに走ってるんだ。ありえない!オレはがしがしと自分の頭をかく。そんで執務机に突っ伏した。
 もうすぐあいつと出会った頃のオレと同じ年になるリボーンは、最近特に愛人の増加が著しい。オレが知ってるだけで15人はいるよ。まぁ、オレが知ってる以外にもたくさんいるんだろうけど。そう考えて、オレはずきりと胸が痛んでくる。別にあいつに愛人がいることはほんっとーに昔からのことだし。今更ショックを受けるようなことじゃないけど。それでも、そのことを考えれば胸が締め付けられるように感じるし、気分は落ち込んでくる。
 やっぱり、オレはリボーンが好きなんだろうか。きっと、認めるのはすっげー悔しいけど、好きなんだろう。だって会えれば会話をすれば、嬉しいし心臓の鼓動がいつもより早い……気がする。オレより一回りも若いやつに何でてって思うけど、でもそれが自分の気持ちなんだからこればっかりはしょうがない。なんて不毛な恋に落ちちゃったんだろう。オレははぁーとため息を零す。
 だって、リボーンは、オレのことなんか何とも思っちゃいない。オレのことは、出来の悪い生徒としか見てないんだ。そのことを考えて、オレは凹んでくる。
 あー、もー、何この自分の乙女チックモード!自分で言うのもなんだけど、すっげー気持ち悪っ。ノオオと頭を抱えてしまう。渋面を作ってしまう。周りになんて注意を向けずに、ついついうんうんと唸ってしまった。

「何さっきから1人で百面相してんだ、おまえ」
 その時に、上から聞こえた声にオレはびしりと固まった。見上げてみると、今の今まで考えていた人物が手に紙の束を持ってそこにいて、オレの顔は思いっきり引きつった。
「りっ、リボ……!」
「真面目に仕事してると思えばサボりやがって。鍛え直しが必要か?」
 何やら物騒なことを言ってるけど、オレはそんなことを気にする余裕はなかった。何で何でリボーンがここにいるんだ!?オレの頭は混乱をきたす。
 それにこいつは「何さっきから百面相してんだ」と言ってきた。
 つまりリボーンのことで悩んで悩んでうだうだやってた自分を、こいつは見てたってことだろう。うわ、恥ずかしいにも程がある!
 急に冷や汗が流れてくる。ぐるぐるぐるぐる頭の中は混乱中。けど、そんな混乱も吹き飛ばすような問題にオレははたと気付いてしまった。
 「さっきから」見られてたってことは、まぁいい。まだ羞恥心が爆発するだけで済む。それより何より、もしこいつにその時間に読心術を使われてたら……。最悪だ!
「い、いつから……いつここに来たんだよ…!?」
「いつって、てめーが机に突っ伏すちょっと前からか?」
「んなっ!心は………読心術は使ってないよな!?」
 オレは思わずガタンと立ち上がる。最後の質問は、質問というより懇願だ。お願いだから読心術は使ってないでくれ!こんな形で自分の気持ちが露見してしまうのはあまりにあんまりだ。問われたリボーンは一度目を見開いたあと、すぐにほぉと極悪な笑みを浮かべた。
「そんなに読まれたくねーってことは、俺の悪口でも考えてたか?」
「い、いや、それはマジで違っ…!」
 むしろその逆です、とはこんな状況下じゃ死んでも言いたくない。けど、どうやら心は読まれてなかったらしい。そのことに安堵しつつ、オレは手のひらをつきだして思いっきりぶんぶん振り回して否定した。が、リボーンは懸命に否定するオレを、尚更怪しいって思ったみたいだ。
「正直に本当のことを言ってみろ。今なら銃弾一発ですませてやるぞ」
「死ぬじゃん、それ!ってかマジに違うしッ」
「強情張っても意味ねーぞ。な、ほら優しい先生に話してみろ?」
「笑顔が怖い!笑顔が怖い!むしろどこが優しいんだよ、撃つ気満々じゃねーか」
「一番手間のかかる生徒に悪口叩かれるとは、可哀相にな。俺も」
「だ、だから、違うっつってるだろ!?オレは」
 そこで止めとけばよかったんだ、って後になって思う。けれど、焦ってたオレは止めれなかった。思考より先に、勝手に口が動いてしまったんだ。
「オレは、おまえのことが好きってことをさっきから考えてたんだよ!」
 言いおわった後、ぜーぜーと息を整える。音量の加減を間違えたらしい。しばらくオレの耳には、自分の息を整える音とバクバクする心臓の音しか聞こえなかった。ようやく呼吸が落ち着いてきた頃に、あ!とオレは気付く。
 今、オレ、何を言った?
 今、オレ、何を言っちゃった?
 これ以上にないくらい、冷や汗がだらだらだらだら全身に流れ落ちる。相手の顔が、まったく見れない。オレのアホ!と嘆いても、言ってしまったことはどうにもならない。弁解しようにも、沈黙が長すぎた。
 で、でも。どーせリボーンのことだから、オレの言ったこと真に受けたりしないだろう。冗談抜かせって、怪訝な顔したり、ハンって鼻で笑ったりするんだろう。そうに決まってる。そりゃ、そうされたら傷つくけど、でもそしたら冗談だよ当たり前だろって言い訳がすることが出来る。よっしゃ来い!と決意を固めて、オレは俯かせていた顔を上げた。ら、目の前に朱い顔があって、オレは思いっきり動揺した。
 え、ちょっと待って。ちょっと待って百戦錬磨のリボーンさん。え、何でそんなに顔を赤らめられておられるんですか…!?
 心搏数はどんどん上がっていって、朱くなった顔につられてこっちまでかぁーって顔が赤くなってくる。な、何この空気。身動きがまったくとれやしない。
「…………追加の書類だ。サボるんじゃねーぞ」
 リボーンが手に持っていた書類を置いて部屋を出ていくまで、見つめあってたままでの沈黙は続いていた。バタンとドアが閉まるのを確認してから、オレはふぅと息を吐いて、どさりとこの身を椅子に預けた。心臓は相変わらずバクバクうるさい。いったい何だったんだ、って思い返しても顔が赤くなるだけで考えが全然まとまんない。
 あーまったくわけがわかんない。オレはぷしゅーと頭から湯気を出して、机の上に突っ伏した。サボるなって言われたけど、仕事のことなんかもう頭ん中から抜け出しちゃってる。
 唯一考えれることは、そう。今度リボーンに会ったらどんな顔すればいいんだろう。ただ、それだけだった。



不意打ち!




(何だかお題/squeezed orange